ご家庭でWi-Fi(無線LAN)を利用しているという方は多くいると思います。もちろん会社でもWi-Fiを利用されている方は多くいますが、「家庭用途と、業務用途に使うWi-Fiって違うの?」「会社で使うWi-Fiってどう選べばいいの?」とお悩みの方もいるようです。
今回は「2023年!会社で使うWi-Fiの賢い選び方」について解説します。
Wi-Fiの通信規格一覧表
まずは、Wi-Fi(無線LAN)にどのような通信規格があるのかを確認しましょう。
Wi-Fiには6種類の規格があり、最も古い1999年策定の11b(IEEE802.11b)から最新2019年策定の11ax(IEEE802.11ax)まで、一般的に利用されるもので6種類あります。
Wi-Fiの通信規格一覧表
無線LAN規格名 | Wi-Fi認証 | 策定時期 | 最大通信速度 |
IEEE802.11a | Wi-Fi1 | 1999年 | 54Mbps |
IEEE802.11a | Wi-Fi2 | 1999年 | 11Mbps |
IEEE802.11g | Wi-Fi3 | 2003年 | 54Mbps |
IEEE802.11n | Wi-Fi4 | 2009年 | 600Mbps |
IEEE802.11ac | Wi-Fi5 | 2014年 | 6.9Gbps |
IEEE802.11ax | Wi-Fi6/Wi-Fi6E | 2019年/2022年 | 9.6Gbps |
Wi-Fiに関しては「新しいものは早い」ため、基本的にはIEEE802.11axを導入しておけば問題ありません。ただ、IEEE802.11ax対応であればなんでもよいというわけではありません。
また「現在、IEEE802.11nだけど、もう変えた方が良いの?」などと悩む場合もあります。
会社で使うWi-Fiとしては、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
会社でのLAN用途は「インターネット」ともう1つ
会社で業務としてLANにつなぐ際には2つの使い方があります。
- インターネット
- 社内ネットワーク
インターネットは、社外にあるデータにアクセスする方法です。逆に社内ネットワークは、社内にあるデータにアクセスする方法です。
家庭用途では、インターネットにアクセスして、ニュースを見る・動画を見るなどの用途が多いといわれています。
業務用途でも、もちろん、インターネットを利用しますが、特徴的なのは「社内データベース」「社内共有ファイル」でもLANを利用するケースが多いことです。
そのため、一般家庭よりも「社内ネットワークの速度を早くする」ことが業務スピードにも直結するため、家庭用途よりも「社内ネットワーク=LAN(有線LAN・無線LAN)」を重視することが重要です。
インターネットと社内LAN、速度の関係性
Wi-Fiに関わることで、よくご相談を受けるのが「現在のWi-Fiシステムを新しい規格に更新した方が良いのか?」とうご質問です。
その判断基準の1つとして「社内ネットワーク(LAN)で共有ファイルや社内データベースを利用しているかどうか」があります。
以下のイラストにて、解説をします。
※通信速度はさまざまな要素により決定されます。このイラストは、関係性をわかりやすくするために、簡略化された限定的な要素で描かれており、記載の内容のみで通信速度が決まることはありません
社内で共有ファイルや社内データベースを利用していない場合
この場合は、LANの用途はインターネットのみとなります。
現在のアクセス回線が高速の場合は、Wi-Fiを新しい規格に更新することで効果は出るでしょう。
ただし、現在のアクセス回線が低速の場合は、インターネットの通信速度は思ったよりも高速化せず、Wi-Fiを新しい規格に更新することによる効果は感じられない可能性があります。
社内で、共有ファイルや社内データベースを利用している場合
この場合は、LANの用途は、インターネットだけではなく、社内ネットワークとしても活用されます。
そのため、現在のアクセス回線の速度が低速であったとしても「社内ネットワークの高速化」としては、効果を感じられる可能性があります。
Wi-Fi機器の入れ替えを行う場合の具体的な基準
インターネットは、光ファイバーやADSLなどのアクセス回線が通信速度に大きな影響を与えます。そのため、アクセス回線だけ、LANネットワークの速度だけではなく、その両方を揃えて向上させる必要があります。
インターネットの通信速度向上のみを目的とする場合
- アクセス回線が十分な速度
→ IEEE802.11ax/Wi-Fi6/Wi-Fi6などの高機能Wi-Fi機器が有効な場合が多い - アクセス回線の速度が不十分な場合
→ 現在、IEEE802.11n以上のWi-Fi機器である場合は、より性能の良いWi-Fi機器を導入したとしても、十分な費用対効果が出ない可能性がある
なお、新規の場合は、IEEE802.11ax機器を導入一択でよいかと思います。ただ、IEEE802.11ax機器にもそれぞれ違いがありますので、この次の段落でご確認ください。
社内ネットワークの速度向上も目的とする場合
- 現在、IEEE802.11a/b/g/nのWi-Fi機器を利用
→ IEEE802.11ax/Wi-Fi6/Wi-Fi6などの高機能Wi-Fi機器への変更が有効な場合が多い - 現在、IEEE802.11acのWi-Fi機器を利用
→ IEEE802.11ax/Wi-Fi6/Wi-Fi6などの高機能機器へ変更することで一定の通信速度向上が見込めるが、費用対効果に見合った改善にはならない可能性もある
社内ネットワークは、アクセス回線を利用しないため、通信速度にアクセス回線は全く関係しません。アクセス回線が低速である場合でも、自社努力のみで、通信速度の向上を図ることができるのです。
そのため、上記イラストのようにアクセス回線で20Mbpsしか速度が出ない環境の場合でも、高額・高機能なWi-Fiを入れることで、社内ネットワークを利用した業務スピードを向上させることが可能です。
Wi-Fi機器の入れ替えを行う場合の具体的な基準としては、以下となります。なお、目的は、インターネットの通信速度向上の場合となります。
なお、現在、IEEE802.11axを導入しているものの、思ったよりも社内ネットワークの通信速度が遅いと感じる、という場合は、IEEE802.11ax機器の違いに起因する可能性がありますので、この次の段落でご確認ください。
Wi-Fi機器(無線LANルーター・無線LANアクセスポイント)の選定方法
Wi-Fi機器の速度を決める基準は2つ
Wi-Fiの通信速度は、通信規格により大きく変化します。ただ、通信規格だけで通信速度は決定しません。Wi-Fi機器の速度を決める基準には大きく分けて2つあります。
- アンテナ数(ストリーム数)
- バンド幅
この2つの掛け合わせにより、通信速度は大きく変化します。
アンテナ数(ストリーム数)とは
アンテナとは、Wi-Fi用の電波を送受信する部分のことを言います。電波の流れを意味するため「ストリーム」という名称で呼ばれることもあります。アンテナ数とストリーム数は同じ意味です。
外部アンテナ=アンテナ(ストリーム)は違う
無線LANルーターや無線LANアクセスポイントには、上記画像のような外部アンテナがついている場合があります。
この外部アンテナは、ケースや器のようなもので、ストリームとして用いるアンテナと違います。
外部アンテナの中にアンテナ(ストリーム)が入っています。下記のようなケースがあります。
- 外部アンテナ1本にアンテナ(ストリーム)が2本入っている
- 外部アンテナ1本にアンテナ(ストリーム)1本が入っている
それでは、外部アンテナがないルーターにはアンテナ(ストリーム)は入っていないのでしょうか?
いえ、そうではありません。外部アンテナがないルーターにはルーター本体にアンテナ(ストリーム)が入っています。
そのため、外見上では、無線ルーターに入っているアンテナ(ストリーム)はわかりません。
これは、仕様書を見る必要があるため、ご購入予定のWi-Fi機器の仕様書をご覧ください。
Wi-fi規格×アンテナ(ストリーム)数×バンド幅で最大通信速度が変化する
1アンテナ(ストリーム)あたりでの、最大通信速度はWi-fi(無線LAN)規格ごとに決まっています。例えば、下記の表より、11nの場合は1アンテナ(ストリーム)あたりで150Mbps、11acの場合は1アンテナ(ストリーム)あたり433Mbpsとなります。
※利用Hz幅によって数値が異なる場合があります
11n/11ac/11axのアンテナ数(ストリーム数)別通信速度一覧表
アンテナ数(ストリーム数) | 11n(Wi-fi4) | 11ac(Wi-fi5)80Hz | 11ax(Wi-fi6)80Hz | 11ax(Wi-fi6)160Hz |
4(4×4) | 600Mbps | 1733Mbps | 2401Mbps | 4803Mbps |
3(3×3) | 450Mbps | 1300Mbps | – | – |
2(2×2) | 300Mbps | 866Mbps | 1201Mbps | 2402Mbps |
1(1×1) | 150Mbps | 433Mbps | 601Mbps | 1201Mbps |
※(4×4)はストリーム数の送信と受信が4本ずつあるという意味になります
そのため、単純に同じwi-fi(無線LAN)規格の場合は、アンテナ(ストリーム)数が多い方が最大通信速度が速いということになります。
さらに、違うwi-fi(無線LAN)規格の場合は、アンテナの本数も含めて通信速度を計算する必要があります。例えば、11n(IEEE802.11n)の4アンテナは600Mbpsですが、11ac(IEEE802.11ac)の1アンテナは433Mbpsとなり、新しい11acですが、アンテナ(ストリーム)数が少ないため結果的には低速となります。
また、無線LANの帯域にはバンド幅があります。簡単にいいますと「幅が広いか狭いか」というもので、数字が大きい方が大容量通信をしても、速度が低下しづらくなります。
最大通信速度が高い無線ルーターを導入したい場合は、最新の通信規格×アンテナ(ストリーム)数×バンド幅が多く広いものを選ぶとよいでしょう。
利用環境により、Wi-fi(無線LAN)の周波数帯が2.4GHzか5GHzかを選ぼう
周波数帯とは、電波の種類です。無線LANでは2.4GHzか5GHzの2つの周波数帯があり、それぞれ下記の特徴があります。
- 2.4GHz 電波が障害物を回避しやすいが、他の電波干渉を受けやすい
- 5GHz 電波が障害物を回避しにくいが、他の電波干渉は受けにくい
利用する建物・部屋の状況を見て、壁が多いようなら2.4GHz、壁が少なく見晴らしが良いようならか5GHz、電波を発するものが多いようなら5GHzなどと使い分けてもよいでしょう。なお、Wi-fi(無線LAN)規格によって、2.4GHzか5GHzという使える周波数帯が決まっていますので注意しましょう。
- 11n 2.4GHz 5GHz 両方OK
- 11ac 5GHz のみ
- 11ax 2.4GHz 5GHz 両方OK
Wi-fi(無線LAN)を利用する電子機器側の性能も確認しよう
電子機器側の性能によっては、無線LANルーターの性能が発揮しきれない
ここまでWi-Fi(無線LAN)の電波を送信する側の機器について解説をしましたが、実は、もう1つ重要なことがあります。それは、Wi-Fi(無線LAN)の電波を受信する側の機器についてです。
「最新の無線LANルーターを導入したがインターネット検索が遅い・ダウンロードが遅い」
という場合は、もしかすると、ご利用の電子機器が遅い場合があります。
iphone11・12・13/iphoneXのWi-fi仕様を確認してみましょう
iphone11・12・13/iphoneXのWi-fi仕様は下記の通りとなります
※iphoneXは11axは非対応です
無線LANルーターの Wi-fi規格と周波数 |
ストリーム数 | 周波数帯 チャンネル帯域幅 |
最大通信速度 |
11ax/5GHz※ | 2 | 80MHz | 1200Mbps |
11ax/2.4GHz※ | 2 | 20MHz | 195Mbps |
11ac/5GHz | 2 | 80MHz | 866Mbps |
11ac/2.4GHz | なし | なし | なし |
11n/5GHz | 2 | 40MHz | 300Mbps |
11n/2.4GHz | 2 | 20MHz | 144Mbps |
上記の図によると、iphoneを使っている場合で通信速度を速めるには、次の2つのポイントがあります。
- 新しいWi-fi規格の無線LANルーターを使う
- どのWi-fi規格であっても、周波数は5GHzを使う
iphone以外の通信機器によって、仕様が異なりますので、お使いの通信機器ではどのようなストリーム数で周波数帯(チャンネル帯域幅)かを確認してみるとよいでしょう。
コストの問題
これまで、データを送信する機器である無線LANルーターと、データを受信する機器である電子機器についてみてきました。当然両方が最も良いものであった方が、速度は速くなります。
ただし、コストの問題があります。最新のものであればあるほど高額になりますし、最新機でもアンテナ(ストリーム)数が多いものは、より高額になります。
そのような場合は、電子機器の数と電子機器の性能で考えてゆきましょう。
もし、iphone13を1台持っていて、その1台でしかインターネット接続しない場合は、iphone13の最大通信速度は1200Mbps(11ax/160MHz/5GHzの場合)となります。無線LANルーターの最新機種&最上位機種は4803Mbpsですので、過剰な性能かもしれません。
もし、無線LANルーターを購入する必要がある場合は下記の表を目安にしてもよいでしょう。
電子機器(例:iphone) | Wi-Fi(無線LANルーター) | Wi-fi規格 | アンテナ数 | |
最新機種を3台以上 | → | 最新・上位機種 | 11ax | 多め |
最新機種を1-2台 旧機種を3台以上 |
→ | 最新・中下位機種 | 11ax/11ac | 多め |
旧機種を1-2台 | → | 最新・上位機種にこだわらない | 11ac/11n | こだわらない |
【結論】業務スタイルに合わせたWi-Fi環境を整えよう
Wi-Fi環境を見直すきっかけは、通信機器の速度が「遅い」と感じる場面が増えるタイミング、といわれています。遅いと感じる場面は、例えば以下のようなものがあります。
- 社内でipadやノートPCを活用するようになった
- 社内サーバーを廃止し、クラウドサーバーを利用するようになった
- WEBミーティングの機会が増えた
Wi-Fiの利用場面は、今後ますます増えてゆくことになると思われます。今回の記事で解説したポイント以外でも、社内ネットワークやインターネット環境の改善には、さまざまなポイントがあります。
- アクセス回線の見直し
- 有線LANケーブルの見直し
- ルーターの機種選定
- アクセスポイントの位置・台数
配線プロッタでは通信環境をトータルでバックアップ
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