オフィスや店舗でのLAN工事を検討していませんか?
モバイル通信と比べて安定度が高く、かつ通信速度の面でもメリットの大きい有線・無線LANは、オフィス・店舗の業務を円滑化する上で有効な設備の1つです。
一方で、LAN工事には配線をはじめとする工事が欠かせません。今回はLAN工事にかかる費用や工事前に準備しておきたいポイントについて解説します。
LAN工事の具体的な流れも紹介していますので、LAN工事を検討している方はぜひ参考にしてください。
1)LAN工事の費用概算
LAN工事を業者に依頼するにあたって、多くの人が気になっているのが費用面ではないでしょうか。
LAN工事の費用はLAN配線の目的によって異なります。目的別にLAN工事の費用概算を見ていきましょう。
目的別のLAN工事費用概算
LAN配線の整理・有線LAN増設:2万円~
既存のLANが配線されているオフィス・店舗での工事費用の目安です。
ケーブルの整理や有線LANの増設をしたい場合は、2万円〜を想定しておくとよいでしょう。
たとえば、「パーティションで仕切られた隣の部屋(床はOAフロア)にLANケーブルを1本増設したい」などのケースが該当します。
すでにLANが設置されているとはいえ、どのケーブルがどの端末に繋がっているのか分からなくなることは十分にあり得ます。
また、ケーブル同士が絡まり合ってしまうと断線や抜線の原因にもなるため、自分で配線するのはあまりおすすめできません。
LAN配線を整理しておくことで、将来的にLANを増設したり退去したりする際に工事を進めやすくなります。オフィスや店舗内でなるべく目立たない形で配線するためにも、専門業者に相談するほうがよいでしょう。
フロア内の有線LAN・無線LAN新設:4万円~
同じフロア内で複数のテーブル島にLAN配線したい場合や、広めの会議室にLANを設置したい場合の工事費用の目安です。
フロアの広さや配線の数にもよりますが、およそ4万円〜を想定しておくとよいでしょう。
配線のほか、必要な機材はHUBや無線ルーター程度ですので、大がかりな工事ではありません。
しかし、配線の取り回しや整理には知識・経験が必要ですので、工事業者に依頼するほうが望ましいでしょう。配線が絡まった状態で使用していると、使い勝手が悪いだけでなくケーブルにつまずくリスクが増すなど、思わぬ事故の原因もなりかねないからです。
フロアを跨いだ有線LAN・無線LAN新設:20万円~
フロアを跨いでLAN配線をする場合の工事費用の目安です。
異なる階へ配線の取り回しをするため、壁や天井への穴開けや天井裏での配線作業が必要になります。工事費用としては20万円〜を想定しておくとよいでしょう。
工事には配線の知識だけでなく、建物の構造や壁・天井の材質に関する知識も求められます。
不適切な方法で配線してしまうと建物自体を損傷させてしまう恐れがありますので、専門知識を持つ工事業者に依頼するのが基本と考えてください。
作業内容別のLAN工事費用概算
工事の種類別に大まかな費用の目処がついたでしょうか。
具体的にどの作業にどれだけの費用がかかっているか、工事業者が提示する見積が適切かどうかを確認する際には、下表の費用相場を目安にしてください。
項目 | 費用相場 |
---|---|
派遣費/作業員1人 | 5,000~10,000円 |
LAN配線費(幹線) | 8,000~12,000円 |
パッチ配線(5m以下) | 2,000~4,000円 |
ルーター設置・設定 | 10,000円 |
HUB設置費 | 3,000~4,500円 |
PCネットワーク設定 | 7,000円 |
合 計 | 35,000~49,500円 |
上記はあくまでも基本料金です。
オフィス・店舗の状況によっては、フラットケーブルを使用したりケーブルをモールで覆ったりすることもあります。そうした場合は別途材料費がかかることを想定しておく必要があるでしょう。
使用するLANケーブルやHUB・ルーターなどは工事業者が用意するのが一般的です。業者によって機材の価格が大きく異なることは通常ありませんので、見積の費目が適切か1つ1つチェックしましょう。
工事費用の相場は、フロアの広さやポート(差込口)数によって変動することがあります。
また、遠方から作業員を派遣する場合は派遣費が加算されることもめずらしくありません。工事費用を抑えるには、できるだけ近くの工事業者に依頼するほうが合理的です。
ただし、費用面だけを重視して工事業者を決定するのはリスクが高いといえます。工事業者を選定する際には必ず複数の業者に見積を依頼し、サービス内容や対応時の印象も含めて総合的に判断することが大切です。
2)LAN工事を依頼する前に準備すること3点
LAN工事を依頼するにあたり、事前に準備しておいたほうがよいことがいくつかあります。工事を依頼してから慌てて判断するのではなく、あらかじめ決めておくべきことは決めておきましょう。
とくに重要なポイントとして、次の3点が挙げられます。
- LAN環境を確認する/決める
- 大まかなネットワーク構成を決めておく
- 依頼候補業者のリストアップを行う
LAN環境を確認する/決める
LAN環境を確認のうえ決定する際は、以下のLAN環境について検討しておくとよいでしょう。メモ程度の簡単なチェックリストを作成し、工事業者に提示できるようにしておくと話がスムーズに進むはずです。
- 有線LANと無線LANのどちらを使うか
- 配線は何を、どう引く必要があるか(配線ケーブルの種類と引き方)
- Hubはどの形態(ポート数、通信速度)のものが、どれだけ必要か
有線LANと無線LANのどちらを使うか
用途に応じて、有線・無線LANのどちらを使うかを決めておきましょう。
有線LANは通信機器とPC・プリンタなどの機器を直接接続するため、通信速度や安定性の面で優れています。一方で、配線の取り回しを考慮する必要があるほか、ポートを増設する際に改めて工事しなくてはならないこともあり得ます。
無線LANは通信機器とPCを接続するケーブルが不要のため、機動的に活用できるのが大きなメリットです。ただし、電波の届きにくい場所や通信機器から離れた場所では通信が不安定になる可能性があります。
実際には、場所や利用方法に応じて有線・無線LANを両方使うケースも少なくありません。将来的な用途が明確になっていない場合など、状況が変わる可能性があれば有線・無線LANをどちらも設置しておくとよいでしょう。
配線は何を、どう引く必要があるか(配線ケーブルの種類と引き方)
LAN工事で非常に重要なポイントとなるのが配線ケーブルの種類と引き方です。ケーブルにはCat5E・Cat6・Cat6Aといった種類があります。
配線ケーブルの種類と特徴
ケーブルの種類 | 通信速度 | 特徴・料金 |
---|---|---|
Cat5E | 〜1Gbps | 通常のデスクワークには十分な実行速度。標準料金。 |
Cat6 | 1Gbps | Cat5Eよりも速度が速い。標準料金よりもやや高め。 |
Cat6A | 10Gbps | 非常に高速だが、あまり普及していない。料金は上記2つよりも高め。 |
一般的なオフィスや店舗であれば、Cat5EまたはCat6で十分でしょう。つまり、標準料金〜やや高めの範囲でケーブルをそろえることができます。
配線の引き方に関しては、近年ではOAフロア(床下)を利用するケースが増えています。
ただし、オフィスや店舗がOAフロアでない場合はフラットケーブルを床下に通すか、もしくは天井裏から壁面を辿ることになります。
いずれにしても、配線はできるだけ外から見えない形で引く必要があります。どのようにケーブルを取り回すのが最も合理的なのか、あらかじめシミュレーションしておくとよいでしょう。
HUBはどの形態(ポート数、通信速度)のものが、どれだけ必要か
HUBとは、1本のLANケーブルから分配して複数の機器を繋ぐために設置する機材です。
オフィスや店舗では複数台のPCやプリンタなどを使用することが多いため、必要なHUBのポート数や通信速度を決めておく必要があります。
ポート数は、接続する機器の数に合わせて決定します。将来的に機器を増設する可能性も織り込んで、余裕のあるポート数にしておくとよいでしょう。
HUBの通信速度は、ギガスイッチと10/100Mスイッチのどちらを選ぶかによって決まります。
ギガスイッチは動画通信など大容量データの転送に適した高速通信に対応可能です。10/100Mスイッチはギガスイッチほどの速度は出ませんが、安価で小規模ネットワーク向きのHUBといえます。
実際には、接続する機器の数によって必要なポート数・HUB数が変わりますので、次項の「レイアウト(ネットワーク構成)」と併せて検討するとよいでしょう。
大まかなレイアウト(ネットワーク構成)を決めておく
工事業者に依頼する前に、大まかなレイアウトを決めておきましょう。工事業者が知りたいのは、主に次の点です。
- デスクの配置
- PCを設置する位置
- ルーターの位置
- 無線LANの設定予定場所
- デスク以外の場所にも配線が必要か(応接室など)
とくに重要になるのが島とデスクの数です。
たとえば、8席の島であればLANはルーター用に1本+8本の計9本が必要になります。
この場合、16ポートのHUBが必要です。デスクの数に応じてポートの数が変わるため、必要なポート数を把握しておく必要があるのです。幹線は島ごとに1本ずつ引きますので、島の数も重要になります。
有線・無線LANをどのように使用するかはオフィスや店舗側の判断ですので、工事業者が決めてしまうわけにはいきません。
デスクのレイアウトを聞かれたら、すぐに答えられるようにしておくことが大切です。デスクの配置図や配置予定図があれば、工事業者との打ち合わせがスムーズに進むでしょう。
依頼候補業者のリストアップを行う
工事業者に依頼する際には、まず見積を出してもらうことになります。
見積を比較検討できるように、複数の業者に依頼しておくことが大切です。
依頼業者の候補を複数リストアップし、その中から見積を依頼する業者を選定しましょう。
見積の工事費総額や内訳はもちろんのこと、見積時の対応が丁寧だったか、迅速に対応してくれたかといった点もチェックすることも重要です。
工事費だけを比較してより安い業者に決めてしまうと、不具合が発生した際のアフターメンテナンスなどでトラブルになる可能性があるため注意が必要です。
「わからないことがたくさん」「LAN工事の依頼を相談して決めたい」という人は、配線プロッタへ
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LAN工事でわからないことが多いという方、相談した上で欄工事の依頼先を決めたいという方は、配線プロッタを活用するとよいでしょう。
3)LAN工事の相談から完了までの流れ
LAN工事の相談から完了までの大まかな流れを確認しておきましょう。
工事の全体像を把握しておくことで、依頼後にどのような順序で工事が進むのかが分かります。一般的な工程と工事の内容は下表の通りです。
工程 | 説明 |
---|---|
① LAN環境・レイアウトを決める | 有線LAN・無線LANのどちらを使うか、配線の種類と引き方、HUBの形態を大まかなレイアウトについて、前章を参考に決めておきましょう。 詳細は工事業者との打ち合わせで決めていくことになるため、デスクの配置図・配置予定図や接続する機器の台数をメモしておくと打ち合わせがスムーズに進みます。 |
② 業者に見積を依頼する | LAN環境とレイアウトを工事業者に伝え、概算見積を出してもらうよう依頼しましょう。 大半のケースで見積自体は無料ですので、複数の業者に依頼して比較検討できるようにするのがポイントです。 LAN環境やレイアウト構築に不安がある場合は、事前に現地調査を実施してもらうことをおすすめします。 |
③ 見積と工程内容の確認・契約 | 各業者から見積が提示されたら、総額と内訳を詳細にチェックしましょう。 工事そのものの料金だけでなく、諸経費や材料費についてもよく確認しておくことが大切です。 内訳に曖昧な点や不明点があれば、必ず確認を取って明確にしておく必要があります。 見積に問題がなければ契約を締結し、工事日程の調整へと入りましょう。 |
④ 工事~工事完了 | 工事開始から完了までのスケジュールは、オフィス・店舗の規模やネットワーク構成によって異なります。 工事中は社内や店内のネットワークが利用できない期間が生じるため、業務に差し障りがないように日程を調整することが大切です。 |
⑤ アフターメンテナンス | LAN工事の完了後も、保証期間内であれば不具合などに対応してもらえます。 突然ネットワークが繋がらなくなるなど、ネットワークにトラブルが発生した際には、施工業者に連絡して対応してもらいましょう。 |
まとめ)LAN工事は専門業者への依頼がおすすめ
複数の機器を使用することが多いオフィス・店舗のLAN工事は、ケーブルの配線やネットワーク構成が一般家庭よりも複雑になりがちです。
用途や設置環境によっては天井や壁への穴開け工事が必要になる場合もあるため、LAN工事は専門業者に依頼するほうが望ましいでしょう。
今回解説してきたポイントを参考に、LAN工事への依頼を進めてください。工事の全体像をあらかじめ把握しておくことで、工事業者との打ち合わせや工事の日程調整をスムーズに進められるはずです。